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MAIL MAGAZINE 梟雑話
2002/06/03 [003]
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ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
山頭火の句
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1年生の子にとっては学校まで約1時間は結構きついものだったと思う。
林檎園の小道を通って川沿いを歩いて工場の後ろを通って、それは何の工場だ
ったのか私は書き石とよんでいた8ミリ角くらいの4、5センチの石を拾うの
が楽しみだった。道すがらの石や良く固まった道に絵を描いたり字を書いたり
しながら学校に行った。製氷工場の前も通った。氷のかけらが捨ててあり夏は
それを拾っておでこや頬に当てながら歩いた。
学校帰りの林檎園の小道には時々垣根に丸太をわたして逃げられないようにし
て馬が放たれていた。恐ろしくて馬に悟られないように垣根伝いにこそこそと
通り過ぎ、後は一目散に家まで駆けたものだった。かなり大きくなってからも
むこうから裸馬が来る、どうしようという夢を見ることが何度もあったのでよ
ほどの脅威だったのだろう。
いつも馬がつないである柳萌えはじめた 山頭火
だが馬のいないときのこの道の垣根は夏になるとすももが実りグスベリが実る
嬉しいものだった。大きなグスベリは赤からちょっと黒味を帯びた色に変わっ
た頃がとろけるように甘かった。家の前には大きなサクランボの木もあった。
緑色の小さな実がだんだん大きくなって黄色くなり赤みを帯びるともう食べら
れた(もっと赤くなったほうがおいしいのだが)。 色づくのを毎日毎日待っ
ていた。私が木登り上手になったのは言うまでもない。
待って(い)るさくらんぼ熟れて(い)る 山頭火
あざみあざやかにあさのあめあがり 山頭火
つつましくここにも咲いてげんのしょうこ 山頭火
げんのしょうこは白い花の咲くそこここに自生している草で、お腹をこわした
時に乾燥させておいたものを少量煎じて飲むとたちどころに治るという薬草だ。
私たち家族の常備薬だった。8年前夫の転勤でシカゴに行ったときも父は持っ
ていけと袋に入れてくれた。
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著者 佐藤北耀
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