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      MAIL MAGAZINE  梟雑話

       2002/07/08  [009]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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今日温室に蛇がいた。青大将である。
過日農作業の一環として、堆肥の移動をした。前年のものを別の場所へ移すの
だが、重くて大変だった。
その中に蛇の卵の抜け殻が5、6個あった。鶏のように硬いものではなく、真
白で柔らかい物である。蛇はいなかった。そのなかの一匹であろう、その青大
将君は君子蘭の鉢の間にじっとしていた。

早速デジカメを取ってきて写真に収めた。おとなしい蛇なのは知っていたので、
恐る恐る3、4センチまでレンズを近づけてみたが、じっとしていたので何枚
か顔を撮ることができた。なかなか可愛い顔をしている。目が可愛いのである。
一昨年の冬ももう少し大きいのを見たのだが、今年のはその子なのだろうか、
ちょっと小さめだけれど、それでも長さは1メートル2、30センチほどあっ
た。

正面から顔を取りたいと思って鉢を動かしたらチロチロと先が二つに分かれた
下を出した。残念ながらタイミングが合わなくて、舌を出した写真は撮れなか
った。胴体部分を大きく撮ってみたが鱗が綺麗な色合いである。
もう少し近寄ろうとしたら嫌がって奥の方へゆるゆると行ってしまった。

美原でも蛇を時々見ることがあった。
一番可愛かったのは、春の玄関先にとぐろを巻いていた小指の先ほどの頭の長
さにすれば30センチくらいだったろうか、赤ちゃん蛇だった。
今でも思い出すたびにその姿が目に浮かぶが、一匹前に鎌首を持ち上げてこち
らを見ていたのである。
ちょっと黒っぽくて尻尾の方は爪楊枝の様な細さだった。日光浴をしていたん
だろう。

美原に新しい共同浴場が出来た。
その開場初日に一番のいたずら坊主が、脱衣所の棚に青大将を置いて騒ぎにな
ったことがあった。懐かしい思い出である。

蛋白質に不自由していたその頃、青大将は癖がなく淡白でおいしいといって皮
をむいて開いて蒲焼のようにして食べた人がいた。
世界をみわたすと、信じられないようなものまで食べている人たちがいるのだ
から、きっと言うとおりに美味しかったのだろう。
私はアメリカで蛙の脚のフライようなものを好奇心で食べたことがあるが、淡
白な味で不味くはなかった。

秋の裏山探険で刈り取った草が山積みしてあるところで蛇のぬけがらを見つけ
たことがあった。その枯れ草の山には何箇所も穴が開いていたので、蛇の棲家
だったのだろう。棒でつついてみてが蛇は出てこなかった。

その頃私は手の甲に数個のいぼができていた。蛇の皮でこするといぼがなくな
るというのを聞いていたので、ぬけがらの一番立派なのを拾って胴に巻いて帰
って、何度も擦り付けてみたけれどいぼはいっこうになくならなかった。

何時消えたのか覚えていないが私の手の甲のいぼはなくなったのだから何年も
して効果が出たのであろうか。


  すずしく蛇が朝のながれをよこぎった  山頭火

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    著者 佐藤北耀

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