##################################################

      MAIL MAGAZINE  梟雑話

       2002/07/15  [010]

##################################################
 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
##################################################

私は今デジカメにこっている。

父の畑は5月の末から6月にかけて、プラム、梨、林檎、グミ、ライラック、
苺、ハスカップと次々花が咲いて虫の天国だった。
ダリアの球根の播き付けで忙しい中せっせと写真を撮った。
息子のお古のデジカメを譲り受けて、接写の仕方などを事あるごとに習って、
少しずつ解るようになってきたところのこの虫と花の饗宴である。撮らぬ手は
ない。

暇がない息子には申し訳ないけれど、この材料たちで自分でもびっくりするよ
うなよい写真がたくさん撮れた。
重い思いをしてパソコン、デジカメ、スキャナーなどを背負って来た甲斐があ
ったというものだ。
早速よさそうなのを息子にメールで送って見てもらい、アドバイスを貰う。
素直な生徒は、言われたことを頭に入れて次に臨む。腕があがらなかったら申
し訳ない。

先日デジカメをもってぶらぶら町の方へ歩いてみた。
道路沿いの背の高い草の先の方が丸まって、沢山の蟻が忙しそうに動いている
のをみつけた。面白い図だったのでぱちぱち撮ってみた。
撮りながら、2本ほど先の同じような草に、黒い大きなものが見えていたので、
枯葉だろうと思っていた。蟻を撮り終えて念のため見ると、それは大きなミヤ
マクワガタの雄であった。
草をあちこち動かしながら、色々な角度から写真を撮った。

パソコンで見ると、蟻が忙しく働いていたのは、くるくる丸まった葉の内側に
無数のアブラムシがいたからだった。
ミヤマクワガタの光って見えた外皮は、金色の無数の毛のようなものである。
パソコンで拡大してみると、肉眼では気が付かなかったものがみえて、びっく
りしたりその美しさに感動したり、今ではデジカメは無くてはならない物にな
っている。

札幌の平岸の家の前に大きなアカダモの樹があった。
枝は高すぎてとても手が届かず、その太い幹を思いきり足で蹴るか、太めの棒
を持ってきて叩くと、上からばらばらといろんな虫が落ちてきた。
その中にはコクワガタがいた。

美原で捕まえたクワガタは、ミヤマクワガタやアカアシクワガタだったと思う。
農場の官舎のはずれに、幹が半分から折れたような柳の樹があり、そのくぼん
だところに何種類かの虫が良く集まった。
すこし暗くなってからか、朝早く行くとクワガタを捕ることができた。

転勤で千葉の柏に住んだことがある。
雑木林があって色々な虫がいた。ここで捕ったのはノコギリクワガタだった。
頭と胴体の境に70センチほどの糸を結んで、もう一方の糸先に割り箸を結び
付け、割り箸にクワガタをつける。
登りつめて行き場のなくなったクワガタは、はねを広げて飛ぶのである。
糸で繋がれているから箸を軸に円を描いて飛ぶ。
この素朴な遊びは父も子供の頃やったそうである。

子供の頃遊んだもう一種類の虫はカミキリムシである。
触角の長いこの虫は上から持つとぎしぎしと音を出した。
この虫を捕まえると、髪の毛を一本抜いてその歯(?)で髪の毛を切らせて遊
んだ。プチッ、プチッと切るのを見てこの虫に噛まれたらどんなの痛いだろう
と思ったものだ。

1997、8年頃、シカゴで公園や住宅街の樹木が、タイガービ−トルの被害
を受けて枯れ始めているというニュースが、しょっちゅうTVで放送されてい
た。タイガービートルを辞書で引いたらハンミョウと出たが、その映像や、樹
に入り込んだ幼虫が、樹を食い荒らして枯れていくということから、私はカミ
キリムシだと思った。
中国から輸入された物の梱包木材から、このような大発生になったのだといっ
ていた。
アメリカにはもともとカミキリムシはいなかったんだろうか。今も疑問である。

日本では蝉は身近な昆虫であるが、シカゴでは私のいた5年余の間見たことも
声を聞いたことも無かった。
私たちより7年も前から駐在している方に聞いた話だが、数年前に蝉が大発生
したという。
13年蝉といって、大体13年間隔で蝉が大発生するのだそうである。
その多さといったら、道は車で潰された蝉でぬるぬる、家から出るときはまず
ドアをどんどん叩いて蝉を落としてから出ないと、蝉が降るように落ちてきた
そうである。

  山のいちにち蟻もあるいて(い)る  山頭火

  炎天のはてもなく蟻の行列  山頭火

  年とれば故郷こひしいつくつくぼふし  山頭火

  遠く人のこひしうて夜蝉の鳴く  山頭火

  この旅、果てもない旅のつくつくぼふし  山頭火


###################################

    著者 佐藤北耀

###################################