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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2002/11/11 [027]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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学校

前回書いたように美原の小学校は初めは分校であった。先生は年配の校長先生
と若い先生の2人で、校舎は木造の小さな建物であった。

分校から村立に昇格(?)した学校は新築され、先生も一新されて、校歌も校
旗も出来た。
子供たちにとって何よりも嬉しかったのは、広い体育館だった。天井の高い体
育館は縄跳びも球技もできるし、跳び箱も床運動のマットもそろい、冬でも思
いきり遊んだり走り回ることが出来た。

立派な引き幕のついた舞台も出来た。
文化の日の頃には作品発表と学芸会が開かれた。私の学年は男子3人、女子2
人で歌、器楽演奏、遊戯、劇と生徒の少ない分なんにでも出ることになるので、
覚えるのが大変だった。校長先生の奥さんが弾くオルガンに合わせて校歌や歌
を歌う。

手巻きの蓄音機がありレコードに合わせて踊る遊戯は、農場のお姉さんたちが
放課後教えてくれる。
蓄音機の手回しハンドルをぐるぐる回してレコードに針を置くとラッパのよう
な拡声器(?)から音楽が流れ、スローになると飛んでいってまた巻くもので、
今のCDやMDなどからみると信じられない時代だった。
どきどきしながらもどの子もみんな一生懸命歌ったり踊ったりした。

馬鈴薯の収穫時期になると全校で芋拾いを手伝い、その労働の代償で図書が年
々充実していった。巌窟王や三銃士など夢中で読んだ。

新校舎は分校よりも少し遠くなり、反対端のほうに住んでいた私達は、2メー
トルも雪が降る冬は、学校へ行くのが大変だった。
通学前に馬橇で雪を掻いてくれた道をたどるのだが、馬がぬかった穴がところ
どころにあり、その上に雪が被っていると突然片足が穴に落っこちて転んだり、
鉄を打ち付けた馬橇が、硬く押しつぶされたテカテカの雪の上で滑って転んだ
り雪まみれで登校する。

吹雪の日や大雪の日は、スキーを履いてランドセルを背負っての登校だ。
顔は雪で濡れ気温の低い日は眉毛も睫毛も凍って、上と下の睫毛がくっついて
目が開けられなくなることもしばしばで、母の手編みのぼっこ手袋と言ってい
たミトンも雪の団子のようになる。
吹き付ける風と雪で息苦しくなり喘ぎながらスキーを漕いだものだ。

こんな時は鼻をすぼめて息を吸うと鼻の穴はぴたっとくっついてしまう。
汗で濡れた手で玄関のドアなどの金具に触ると手がくっついてしまって、離そ
うと思うと痛くて手の皮がむけるのではと思ったものだ。

学校は赤々とストーブが燃えていて、スキーを脱いでパンパンと叩き合わせて
雪を落とし玄関に立てかけて、上着、帽子、マフラー、手袋などをストーブの
周りの囲いにかけて乾かすとプーンと汗混じりのにおいがする。
どの子のほっぺたも真っ赤で勉強前にひと疲れである。

昼食前の授業が始まる前に弁当をストーブの周りにおいて温める。
沢庵をはじめ質素なおかずの匂いが漂った。
それぞれのお弁当を食べて、大きな薬缶に沸かしたさ湯をいただいてのお昼だ
った。

  梅干あざやかな飯粒ひかる  山頭火

  御飯の白さ胡麻塩ふりかけていただく  山頭火


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 真冬並みの寒気が入り込んで来ているそうで今朝も雪が降った。まだまだ農
作業が終わっていないので、毎朝天気を見ては一喜一憂している。太陽が射す
とぱあーっと暖かくなり翳ると冷えあがる。畑での作業は「北風と太陽の話」
を実感させてくれる。雪が大好きな私もさすがに寒空の下の雪混じりの農作業
にはまいる。どうかもう2週間ほど暖かい日が続きますように。

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ホームページのトップページに一筆書を添えてデジカメ写真を載せています。
不定期ですが更新していますのでご覧ください。


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    著者 佐藤北耀

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