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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2002/12/16  [032]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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ホロホロチョウ

キジ目ホロホロチョウ科大きさ形ともにニワトリに似る。尾羽ははなはだ短い。
頭上に赤色の角質の突起がある。普通暗灰色で多数の小白斑がある。アフリカ
の草原に群生。肉は美味で飼養される。
広辞苑にこう記されている。

小さい頃、同じ道筋の端の家で豚を飼っていた。
その家の前を通ると一種独特の臭いがした。豚を飼っている家は他にもあった
が異質な臭いであった。
戦後のこの時期、そこの家ではアメリカ進駐軍の残飯を回収して、豚の餌にし
ていたのである。

パン、バター、チーズ、肉、強い匂いの野菜、香辛料、オレンジ、コーヒーなどの臭いが混ざり合ったいわゆるバタくさい臭いだった。
ブラジルの市場はこれと同じ臭いであった。

戦争に負けて日本は貧しさのどん底で、駐留していたアメリカ兵に日本の
若い女性が、お金と物資のために身を売っていたといわれた時代である。
その家はアパートを持っていて、その種の女性が何人か住んでいた。
ドレスを着てパーマをかけてリボンを結び、真っ赤に口紅をつけて
ハイヒールを履いてハンドバッグを持った独特のスタイルであった。
皆いつもチュウインガムをかんでいた。
生活のためにやむを得なかったのであろう。

さて、その家ではホロホロチョウを数羽飼っていた。ニワトリよりもずっと大きかったように思うが、放し飼いにされていた。
柵をめぐらした中には七面鳥も飼育されていた。
雌に自分をアピールしていたとは知らなかったが、七面鳥がときどき尾羽を扇
状に広げているさまは、悠然として厳かであった。

頭部と咽喉部に赤いしわの多いぶらぶらしたものがぶら下がっていて、怒ると
色が変わるのでよく見にいったものだ。
白いのが赤くなったり青くなったり七面鳥と言われる所以だろう。

賑やかでちょっと怖そうな七面鳥に較べて、ホロホロチョウはシックな羽で身
を包んだおとなしい鳥だった。
いつもかたまって地面をコツコツつついて何かしらついばんでいた。

ブラジルで子どもを遊ばせるのに毎日行っていた大きな公園にホロホロチョウがいた。放し飼いにされていて、数羽ずつの集団で餌をついばんでいた。
公園にはアイスクリームやガラス張りの箱中でポコポコはじけて次々生まれて
くるポップコーンを売る可愛い手押し車の店があり、ポップコーンをおすそわ
けしてやると喜んで食べていた。

以来ホロホロチョウは観賞用の鳥だと思っていた。
過日のテレビで、飼育してその肉料理を食べさせる専門店があり、レポーター
はとっても美味しいといっていた。

人間にかかっちゃ何でも喰われてしまうね。まいりました。

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昨日今日と寒さが緩んだが、最低気温が−17℃の日が数日続いた。
温室の屋根にぶら下がったつららが、太陽熱によって解けてぽたぽた雫を
落としている。その雫がつららを離れて、いわゆる涙としてイラストなどに
書かれるあの状態を何とか写したいと、お相撲さんよろしく完全防寒スタイルで挑んだが、どうも相性が悪いのか3日とも撮れなかった。

椅子に座って膝をかばって、デジカメで600枚近くとったのにである。
太陽は遠慮なくつららを解かして次々と落としてくれて、ため息と共に被写体は消える。
息子があまり構えないで何気なく撮ったほうがよいとアドヴァイスをくれたが何時になったら撮れるだろう。

  とぼしいくらしの屋根の雪とけてしたたる  山頭火

  雪の夕べをつつましう生きてゐる  山頭火

  雪の日の葱一把  山頭火

  雪ふる食べるものはあって雪ふる  山頭火

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    著者 佐藤北耀

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