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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2002/12/29  [034]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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師走風景

師も走るという12月、気持ちは急くが若い頃に比べると、何から何まで年末
に大掃除しようという気が歳とともに失せてきた。
上手に手抜き出来るようになったという事か。

息子のところに一週間ほど逗留しての帰りの常磐線で、珍しい光景を見た。
次の駅で隣りの車両に、10本ほどの長柄の箒と長柄のはたきのような物1本を
束ねたのを持った職人さん風のおじさんが乗ってきた。

自分で作った箒なのだろうか、どこからか仕入れてきたものなのだろうか、ど
こかに売りに行くのであろうか。
穂先が見事に切りそろえられた姿のよい箒は、綺麗に化粧編みが施されて、赤
味がかった色に塗装された柄に、しっかりとくくり付られている高級品だ。

今は掃除機の時代で箒の無い家も多いだろう。
家に掃除機がきたのは昭和37、8年頃だったろうか。今のように丸っこいスタ
イルとは違い直方体の重いものだった。
むかしの掃除は、はたきでパタパタほこりを払い、箒で掃き、雑巾がけをする
というものだった。

箒は柄が短いものもあった。
箒の先をはねないように、静かに掃かないとほこりが舞うだけだよとよく母に
言われた。
ほこりのひどい時には、茶殻をためておいて少し絞ったものや、新聞紙を水に
浸して絞ってちぎったものをまいて掃除した。
それらにほこりがくっ付いてきれいに掃除できる。

箒に使うのは何という草なのだろうか。新しい箒は良い匂いがして良く掃ける。
長柄の箒は天井の煤をはらうのに便利だった。
手拭を頭に被り、もう1本の手拭をマスクのように口に当て、首の後ろで結ん
で、大掃除をしたものだ。

そうそう、サザエさんの漫画には長居のお客さんに帰ってもらいたくて、箒を
逆さに立ててあったのを思い出す。

箒を持ったおじさんは、鼻の高い眼鏡をかけた中年の外国人の隣りに座った。
その対比が面白くて、何とか2人をカメラに収めたいと思ったが、箒の陰で外
国人紳士は見えず、読んでいた外国語の本だけが見えたので写真に撮った。
同じ車両だったら、取り合わせの妙を撮らせてもらいたかったのにと残念だっ
た。

  お正月が来るバケツは買えて水がいつぱい  山頭火

  ことしも暮れる火吹竹ふく  山頭火

  ほんに仲よく寄せ鍋をあたたかく  山頭火

  張りかへた障子のなかの一人  山頭火

  みんな生きねばならない市場が寒うて  山頭火



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    著者 佐藤北耀

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