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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/02/24  [043]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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ブラジル2

ブラジルは地球儀で見るとほぼ真反対に位置している。
日本が冬ならあちらは夏である。

VARIGの大して大きくないジェット機で長い旅を終えて、リオデジャネイロの
空港に降りはじめると、湿度が高いのか機体に添って白い水蒸気(?)が走る。
理科で習った、機体に当たる風が作る流線型の矢印と同じ動きであった。
眼下に見える景色は日の光も緑もいっぱいの、湖が点在している街だった。

税関に行くと係官が紙を見せて、この部屋に行きなさいと言っているようだ。
耳にするブラジルポルトガル語は、何を言っているのかさっぱり解らなかった
が、指差されるままに従って行ってみると、中にいた係官はていねいにパスポ
ートを見て言っていいというしぐさをした。

日本を発つ前に、種痘の接種済み証明書を神戸の指定病院に貰いに行ったりし
たので、そんなもののチェックであったのだろう。
別室に呼ばれるなんて言うことは聞いていなかったので、疲れがいっぺんに出
たように思った。
通関して荷物の受け取り所に行くと、1年余のブラジル生活で日焼けした夫が、
出てくるのが遅いので心配したようすで立っていた。

目的地のミナス・ジェライス州の州都ベロオリゾンテ(美しい地平線の意)へ
の便には時間があるので、レストランで休憩した。
何か食べようと注文してくれたのは、ハム・チーズのはさまった初めて食べる
ホットサンドイッチと瓶入りのミネラルウオーターだった。
チーズはにおいがきつく、疲れきっていたこともあって、ホットサンドイッチ
は印象の悪いものになった。

水はといえばなにやらサイダーのように泡がある。
一口飲んでその不味さに驚いた。
アクア・コンガス(炭酸入りの水)は胃の働きを助けるので、好んで飲まれる
と言うことだったが、味のない炭酸水は飲めなかった。

水に恵まれている日本では、最近でこそ名水だの深層水だのと、ミネラルウオ
ーターが飲まれるようになったが、水質の悪い国では水道水は飲めなくてボト
ルに入った水を買わなければならない。

さて、緑のリオデジャネイロから乗り継いで向かった、鉱石の宝庫、ベロオリ
ゾンテは、赤土の大地の中に作られた大きい町だった。
セントロ(中央)から放射状に作られた町は、平坦地ではなく坂の多い町だっ
た。

スコールに見舞われると、雨水はごみとともに低い方へ流れて町はきれいにな
り、設備の悪い郊外は流れてきた水と赤土の泥で洪水状態になるのだった。
スコールが去ると、じりじりと照る日は、すぐに町を乾かして何事もなかった
ようになる。
湿度の低いベロオリゾンテはどんなに気温が高くとも家の中や木陰に入ると涼
しい所であった。


  物思ふ雲のかたちのいつかかはつて  山頭火

  あの雲がおとした雨にぬれてゐる  山頭火

  しとどに濡れてこれは道しるべの石  山頭火

  しとどに濡れて草もわたしもてふてふも  山頭火

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    著者 佐藤北耀

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