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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/03/03  [044]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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ブラジル3

ブラジルのカーニバルが始まったというニュースが新聞に出ていた。
サンバパレードは2日から4日の未明まで続くそうな。
サンバのリズムが聞こえてきそうだ。

私がブラジルに着いた頃は、カーニバルに備えて、サンバ・エスコーラ(サン
バ学校)から、賑やかに楽器の音が毎日聞こえていた。
太鼓、マラカス、小砂利か豆のようなものが入っている金属製の細い筒などの
楽器で作られる軽快なサンバのリズムは、心地よいものだった。

黒人、ラテン系の人々、インディオの人々もリズム感は抜群で、楽器も歌も踊
りも巧みだ。
人種のるつぼと言われる国だが、インディオと白人の混血の男子は精悍な顔を
していて美しかった。

アフリカから奴隷として連れてこられた黒人達の音楽が基盤となったサンバと、
それに合わせて皆で踊る、黒人労働者の年に一度の祭が、現在のカーニバルに
発展してきたようだ。
低下層で苦しい労働を強いられた人たちの、この一時にかける思いの裏を考え
ると、せつない物がある。
今では黒人だけの祭ではなくなっている。

一年の働きの多くを貯めて、この数日に全て注ぎ込む黒人達の思いは、熱烈な
ものである。
殊にリオデジャネイロのカーニバルは、年々派手になって、衣裳に、山車にか
けるお金はいかほどだろうか。
大掛かりな山車は、一年がかりで作られるようだ。
工夫を凝らした山車が、何台も何台も競い合って続くのである。

楽隊も踊り手たちも、各団体ごとに衣裳を競い合って想像を絶するものだ。
殆ど裸に近いような衣裳で、大きな鳥の羽で作った冠を頭に載せて美しい体を
誇示する人、女王様のような衣裳の人、どぎつく化粧をしてトップレスで紐の
ような下着で踊っている人、リオのカーニバルはホテルのテレビで見たのだが
度肝を抜かれた。

ベロオリゾンテのカーニバルは地味で、衣裳は凝ってはいたが、過度の露出は
なかった。
教会の前では踊りはいっそう賑やかになり、一団が行くと次の人たちがまたと
まって踊り、延々と続いた。
軽快なサンバのリズムに、見ている人たちの体も自然に動き出すのであった。

飲んで食べて踊って正体なく酔いしれた男女が、本能の赴くままに戯れて、翌
年には大勢の私生児が生まれるという現実もあるのだと聞いた。


  酔ざめの風のかなしく吹きぬける  山頭火

  酔ざめのつめたい星がながれた  山頭火

  酔ざめの星がまたたいてゐる  山頭火

  酔ざめのどこかに月がある  山頭火

  酔ひしれた月がある  山頭火



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    著者 佐藤北耀

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