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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/03/10  [045]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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ブラジル4

坂を登っていったヤシの木の並木のある山の手の公園で、毎週末ヒッピー市が
開かれていた。
公園の通りのヤシの木の下にずらりと幾筋にも市が並ぶ。
市といっても別にテントや店舗が作られるわけではなく、舗装された歩道に直
に、或いは布を敷いたりした上にそれぞれ商品を並べている。

私はこのヒッピー市が大好きだった。
手作りの素朴な商品が、所狭しと並んで魅力があった。

革製品が一番多かったと思う。
思い思いの素材とデザインで、大きな旅行鞄からハンドバッグ、セカンドバッ
グ、バックパック、財布、ベルト、ヴェスト、帽子、ブレザー、ブックカバー
クッションなどなど、表革使い、裏革使い、子牛や羊の毛のついたままの革を
使ったもの、蛇やワニの革を使ったもの、染めたもの、型打ちをして染めたも
のなど実に多種多様だった。

厚手の一枚革に躍動感ある模様を彫って色着けしたショルダーバッグを買った
が、とても硬いものなので東京や大阪の人混みでは人に当たるのが気になった
ので使わずに今でもしまってある。
いろいろな色の子牛の毛皮や羊の毛皮をはぎ合わせた敷物も見事な模様に出来
ていた。

可愛い人形や動物のぬいぐるみもあった。
なかの詰め物が具合よく働いて、人の肩に片手でぶら下がる手の長い猿のぬい
ぐるみが気にいって買った。

南国の明るい国民性が溢れる、細かい点描画は楽しいものだった。
インディオの人や黒人の人たちの生活や風俗を彫金した銅版の壁掛けも面白く
何点か求めた。
木製のパズルのようなものや壁掛けなども面白いものが沢山あった。

鉱石の宝庫ミナス州らしく貴石を使ったアクセサリーや貴石を編みこんだ金属
製の楊枝、七宝焼きのアクセサリー、皿なども日本人の感覚とは違う色彩で美
しかった。

私の一番のお気に入りは、小さな色とりどりのドライフラワーの飾りだった。
あの色合いは草花を乾燥させて着色してあったのだと思う。
小さな籠に盛ったもの、木製の荷車のミニアチュアに盛ったもの、カップ、白
鳥、靴、帽子などの可愛らしい小さいせとものの容器に盛ったもの、粗く編ん
だ麻布に包んだ花束などどれもこれも素敵だ。
荷車に盛り合わせたドライフラワーを買って部屋において楽しんだ。

布張りの子供用の椅子もいろいろあった。
風船を持った子どもの絵の布を張った木製の折りたたみ椅子を買った。
これは持ち帰って今でも家に置いてある。

ポップコーン、ガラナと言うブラジル人が好む飲み物(私達も好きになった飲
み物)やコーラ、その場で絞ってくれる生ジュース、ちょっとつまむ中におか
ずのようなものが入ったパイやパン、アイスクリームなどの手押し車の移動式
店も出て、一通り見て歩くには小一日楽しめる大きな市だった。


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3月9日美原小学校の閉校式に出席しました。
顔見知りの上級生、下級生が5、6人きており、皆50代、60代で容貌も容
姿も変わってはいるのですが面影はあって、すぐにちゃん付けで呼び合って懐
かしい再会でした。
農場の職員と学校関係者の職員の子弟だけのための学校は、全校生が6年生2
人だけになり、この3月卒業してしてしまうと新1年に入学が予定されている
児童は1人だそうで、やむなく51年の歴史に終止符が打たれることになった
のです。
40年ぶりに校歌を歌ってきました。
6年生2人と若い先生、2人の卒業生の5人で打った真狩祝太鼓の響きは、
小さな体育館に響き渡り出席者の腹の底まで、そして剥き出しの体育館の梁や
柱の1本1本にまで、そして校舎の隅々にまで沁みこんでいくようでした。
頂上は見えませんでしたが、われらが蝦夷富士は悠々と気高く聳え立っており
対する尻別岳はまじかに、小さな集落を守るように雪の姿で聳えておりました。
思い出話に花が咲き、あらためて大自然の中で子供時代をすごせたことを幸せ
に思いました。

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  ふる郷の言葉なつかしう話つづける  山頭火

  あの汽車もふる郷の方へ音たかく  山頭火

  遠山の雪も別れてしまつた人も  山頭火

  このさみしさや遠山の雪  山頭火

  遠山の雪ひかる別れなければならない  山頭火

  雪ふる逢へばわかれの雪ふる  山頭火

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    著者 佐藤北耀

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