##################################################

      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/04/21  [051]

##################################################
 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
##################################################

ドライバーズライセンス 1

車社会のアメリカでは、16歳になると授業の一環として高校生はわずか20
ドルでドライバーズライセンスを取得できる。
次男と三男もそうやって免許を取得した。
カード社会のこの国では、免許証は身分証明として提示を求められる。
お爺さんお婆さんになり、体がいうことをきかなくなって免許を召し上げられ
るまで運転し続けるのである。

日本では自動二輪の免許を取って、ホンダのリード50ccに乗っていること
で充分だったのだが、この転勤でどうしても免許を取らねばならなくなったの
である。
これを勉強してなるべく早く免許を取れと渡されたのは、英語のイリノイ州の
免許取得用の小冊子であった。
アメリカでは州によって交通規則が違うのである。

英語で交通規則を理解するのはなかなか大変なのである。
なんとなく理解できても前置詞がきっちりと解らない。
簡単な言い回しが具体的にどういうことなのか解らない。
辞書と首っきりで訳しても、単語はあっても全部は辞書には載っていないので
ある。

毎日の慣れない生活の中で、遅々として進まない。
皆が参考にしているという模擬テストと回答を見て、テキストで理解できない
ところは答えを暗記することにした。
まず筆記試験を受けて仮免(?)を貰い、それから路上練習に入る。

子供の頃日本で過ごしたというアメリカ人が家まで来てくれて、彼の教習用の
車で即路上練習が始まった。
家の前で簡単な説明を受けて、エンジンのかけ方、発進の仕方を見せてくれて
席を替わって、はいやってみなさいという。
キーを回してエンジンがかかった時の恐ろしさといったらなかった。

言われる通りにすると車が動いた。
もっとアクセルを踏むようにいわれても足が硬直して動かない。
片言の日本語でそんなに遅くては他の車の迷惑だという、何を言うか、私は恐
ろしさにすくんでいるというのに。

家の近辺は閑静な住宅街なのでほとんど車も通らないのだが、自分がこの車を
動かしていることが恐ろしい。
途中でまた席を替わってカーブの切り方を教えてくれる。
家に戻るには直線では戻れない。
方向指示器も動かさねばならぬ。
回したハンドルは戻さないと真っ直ぐ走れない。

かくして頭は混乱、足はぶるぶる、頬はかっかとなって疲労のきわみだ。
命にかかわるものだから先生が怒るのも解るけど、49歳にもなって何でいま
さらこんなめにあわなければならないのかと恨めしく思った。
次回の予約を決めて家に帰ってばったんきゅう、先生はハンサムだけどもう会
いたくないなと思ったものだ。
                          つづく

            ************

花花花の茨城からフェリーで帰り着いた北海道は、福寿草、クロッカス、ユキ
ノシタ、早いところでヒヤシンスが咲き始めているくらいで、庭の枯れたもの
を片付けているような状態で桜の蕾もまだ固い。
日本は本当に南北に長いことを実感します。

  そこらに冬がのこつてゐる千両万両  山頭火

  名もない草のいちはやく咲いてむらさき  山頭火

  干物干して蕾はまだまだかたい  山頭火

  

###################################

    著者 佐藤北耀

###################################