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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/06/30  [061]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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タイサンボク

さほど大きくない木々に大きな白い花が数個ずつ咲いている。
少し遠くのスーパーの前の通りの両側に20本ほど、街路樹としてそれは植え
られていた。
花は肉厚で直径20cmほどの大きさで上を向いて咲いており、その細い木に
は不釣合いに見える。

初めて見た花なので、なんという木か気になって数日後また行ってみた。
ちょうど道端の草を抜いて掃除をしているおじさんが居たので、なんという木
か尋ねてみた。
「タイホウサンボクと言って、10年ほど前に植えたのだがなかなか大きくな
らない木なのだ」とのこと。

その人はタイホウサンボクといっていたけれど、タイサンボクに違いないと思
って本屋に立ち寄って庭木、街路樹の本を見たらやはりタイサンボクであった。
泰山木と山頭火の句で見知っていたのでこの字からして中国が原産ではないか
と思っていたのだが、なんと北アメリカ南東部が原産なのだそうだ。

モクレン科の常緑高木で高さは約10mにもなるそうで、日本には明治初期に
渡来して暖地で観賞用として栽培されているのだそうである。
そういえば20年位前に新宿御苑を訪れた時に、白い大きな花をたくさんつけ
て生い茂った7、8mはあった泰山木を見ていたことを、今これを書きながら
思い出した。
枇杷の大木が無数の橙色の実をつけていた時期だったから間違いないと思う。
あまりにも木の状態が違うので同じ物とは思わなかった。

山頭火の  「泰山木、雀の好きな木」  という句が気にいって、書作をし
たり表装作品にしている。
手元に山頭火の資料を持ってきていないので詳しいことは書けないが、雀がた
くさん集まって雀のお宿になっているのを句にしている。
雀のお宿の賑やかさ喧騒はあちこちで目にしているので、嬉しくなる光景であ
る。

泰山木の白い大きな花は、梅雨の鬱陶しさをしばし忘れさせてくれた。
明日は晴れるようなのでカメラに収めてこよう。

  泰山木、雀の好きな木  山頭火

  たまたまたずね来てその泰山木が咲いてゐる  山頭火


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    著者 佐藤北耀

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