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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/07/07  [062]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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オランダ

土浦で学生生活を始めた息子を訪ねた帰り、一面の青田の向こうに突然大きな
風車が見えてきた。
梅雨に煙るそのむこうは日本一大きな湖霞ヶ浦だ。
バスのアナウンスは次は霞ヶ浦公園といっている。

ゆっくり回っている風車は青田の景色にしっかりマッチしていて、11年前に
訪れたオランダの郊外の風景を思い出させてくれた。
1992年夏、10年に一度の世界一大きな花の万博フロリアードにダリアを
出品した父に付いて弟夫婦と行った。

アムステルダムにホテルを取ってハーグ郊外のズータメアの会場まで電車で行
ったのだが、運河沿いに田舎に行くにつれて畑や牧場が広がり所々に風車が見
えた。
オランダといえば風車というほど有名なあれである。
北海道生まれの私には風車は初めて見るものだったが、牧場や畑の風景は懐か
しいものだった。

隣に座った年配のご婦人と大してうまくもない英語で話をしたのだが、夏の間
は牛を外で飼育しているが、冬は非常に寒くて屋内で飼育しなければならない
そうだ。
ゴーダチーズのゴーダで乗り換えて会場に行くことを言ったら、ゴーダの発音
が悪いと何度も直された。

ゴーダチーズが自慢なのである。
世界一うまい自国のGouda cheeseの産地は正しい発音で「グァウダ」でなけれ
ばならないのである。

さて翌日父と弟はダリアを育ててくれた農場を見学に行き、弟嫁と私は電車を
乗り継いでアルクマールのチーズ市に出かけた。
駅から市の立つ広場まではお祭のようで、メリーゴーランド、大きな移動式の
オルゴールが音楽を奏で、飲食の小店がたくさんあって大勢の人だった。

チーズ市は昔ながらのもので、今は春から秋の毎週金曜日に観光客用に開かれ
るショウになってようだ。
白い服に自分の組の色リボンを巻いた麦藁帽子の男が、赤や黄色の大きな丸い
チーズを積み重ねた舟形の台の前後につけられてある紐を肩に掛けて調子をと
りながら車と計量所を行き来する。

随分重いようであるがなんとも面白く見えて取り巻いている観光客は大喜びだ。
計量所では計ったチーズの重さを大きな声で言っている人がいる。
一通り終わって希望者の体重を量ってみんなの笑いをかっていた。
市の周りではゴーダチーズを薄切りにして紙にはさんで売っている。
私達も買って食べたがきめ細かい濃厚な味で美味しかった。

町を歩いて宝飾店でブレスレットを買って手に持って出ようとしたら、店の人
が追ってきてちゃんとバッグに入れないと引っ手繰られると忠告してくれた。
のどかそうに見えるオランダも気を付けて行動しないと思わぬ被害を受けるこ
とが多いようだ。   

  はれたりふつたり青田になった  山頭火


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    著者 佐藤北耀

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