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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2003/08/31  [065]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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5月中旬近くの酪農家にお願いして、牛糞の堆肥を梳きこんでトラクターで畑
を起こしてもらった。
荒く起こされた畑を小型の手押し耕耘機で土を均していると、どこから飛んで
きたのかきれいなセキレイが長い尾を上下に振りながら、少し離れた土均しの
終わったところで何やら啄ばんでいた。

広い畑を外側から渦を巻くように均していき、さっきセキレイがいたところま
で来るときれいな真白い羽が一枚落ちていた。
ご馳走さまとお礼においていってくれたように思えて、拾い上げてポケットに
そっと入れた。

5日ほど前朝霧が立ちこめいたので、カメラを持って近くの鶴の湯温泉まで久
し振りに歩いてみた。
霧はかなり濃く、木々はぼかしの墨絵のように見えて清々しくカメラに収めた。
霧を通して時折雲間からのぞく朝陽が温泉にある池に映り、よい色を出してい
たので写真を撮ったが、不思議な色合いの水面が撮れた。

少し開きかけていた桃色の蓮の花が水に映って美しい。
帰りかけてふと見ると、足元に濃灰色の大きめの羽が落ちていた。
もちろん拾って、そっとリュックのポケットに入れて持ち帰った。
なんという鳥の羽なのかわからないのが残念だ。

田舎道や自然の中を歩く時、いつも細心の注意を払って辺りを見ている。
木の葉の美しい色、雑草のその一枚だけ赤い色、草花や蜘蛛の巣の朝露が陽に
輝くキラキラ色などに感動しながらの歩きは、心のリフレッシュに最高だ。
そんな中、できれいな蝶の死骸や鳥の羽を見つけると、嬉しくて大切に拾って
くる。

都会ではごみをあさり散らかす真っ黒いカラスは、ずいぶんと嫌われているよ
うだが、神戸に暮らしていた時はよくカラスの羽を拾った。
黒には違いないが角度を変えたりしてよく見ると、この羽は玉虫色に光ってと
てもきれいなものだ。
いつかこれを実物と同じように玉虫色の光を入れて描いてみたいと思っている。

ここ早来では、トンビが上空をゆったりとまわって飛んでいるのをよく見る。
目の前にたくさんの筆と一緒に3枚筆立てにたててあるが、大きくてしっかり
したもので、薄茶色に濃い目の縞模様があり白も混じっている。
絵を描くときの消しゴムの屑払いに重宝している。

2年前畑にカケスの死骸があった。
家の庭に三羽の親子が水飲みにちょこちょこきて、子が水のそばにうずくまっ
ていたのを何回か見かけていたのだが、いつのまにか2羽しかこなくなった訳
がこの子の死だったようだ。
カケスの羽は水色と黒の縞模様が美しい。
軒下に持ってきて自然に朽ちるまで待って、色のある羽をいただいて木の根元
に葬った。

昨日の朝ジージーと賑やかなカケスの声に外を見ると、空高く伸びたセコイア
の木から7、8羽のカケスが次々に飛び去った。
カケスが集団でいるのを初めて見た。

シカゴ郊外は動物と人間が身近に暮らすよいところだった。
鳥も色とりどりで、赤いカーディナル、ブルージェイ、レッドウィング、ロビ
ン、黒い羽の先が黄色い鳥、一度だけ見た全身青の小鳥、モーニングダヴ、キ
ツツキ、鴨の仲間など、ファミリールームから見える裏庭にはこれらの留鳥や
渡り鳥をはじめリス、ウサギ、白い逆三角形の顔の狸の親戚のような動物、ア
ライグマなどがきて、自然とともに生きていることが実感できるところだった。

けっして草深い田舎ではなく閑静な住宅街なのである。
自然保護林の近くに住んでいた友と電話していた時、今芝生を鹿が歩いている
と興奮して教えてくれたこともあった。
スカンクは姿を見ることはほとんどないが、臭いでその辺りにいることが解る。
車にはねられたのと林に入っていく後姿を見たことがあった。

ミシガン湖に近く住んでいたのでよく湖畔を歩いた。
波にもまれてすりガラス状になったドロップスのような色ガラス片をずいぶん
拾い集めた。
水に濡れていると宝石のように見える。

そんなこんなを引越しの荷物と一緒にたくさん持ってきた。
ガレージセールで集めた、人から見るとガラクタに見えるような物もたくさん
持ってきた。
落ち着かない生活であける暇がなく、梱包のままであるが私の宝物だ。

  秋風の石を拾ふ  山頭火


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日の照る日も数えるほどしかなく、あっという間に秋になりました。
農作物の不作は深刻のようです。 近郊を車で走っても稲は青々していて花が
咲いていないようにみえる。
夏休みに食べられたはずの畑のトウモロコシも、まだ一度も収穫できていない。

ダリアも丈が低く葉の茂りもいまいちですが、それなりに畑一面咲いています。
ぼちぼち身に来てくれる人もいて、草取りに、花の手入れに一人できりきりし
ていますが、きれいだと感激して帰っていく人たちの声を聞くとうれしくて元
気が出ます。

梟雑話も不定期になってしまいましたが、無理せず続けていこうと思いますの
でよろしくお願いします。

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    著者 佐藤北耀

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