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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2004/01/26  [071]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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フクロウ
御前水の信号を曲がって間もなく、車の前窓の上方を白いふわっとしたものが
横切った。
午後7時前で辺りは暗かったが、角のガソリンスタンドの明りがまだ及ぶ範囲
だったので、何かの光が写ったのかと思ったが、助手席に座っていた三男が、
「フクロウだ」と言った。

運転中の私は視角の一部でしか捕らえられなかったが、息子はフクロウの体の
羽の紋様まではっきり見えたという。
「黄色い眼は見えなかった?」「鈎のような爪は見えなかった?」と矢継ぎ早
に聞いたが、それは見えなかったと言う。

それにしてもずいぶん低いところを飛ぶ。
私の使っている車は小さいが、トラックのような大きな車だったら衝突したか
もしれないのに。
以前、津別で車に衝突したとみられるシマフクロウが保護された記事が新聞に
写真入でのっており、切り抜いてノートに貼ってある。

御前水の辺りには鮭が遡上してくる川があるし一帯は林なので、フクロウがい
ても不思議ではない。
フクロウ大好き人間の私としてはもう少しはっきりと見たかったのだったが、
この辺にもフクロウがいることがわかったのだから、またいつか会えるかもし
れないとうれしかった。

更科源蔵さんのアイヌ文学の生活誌という本にフクロウに関する記述があるの
で、抜粋して紹介します。

  縞梟は鮭などを食糧にするので、鮭や鱒の産卵場の近くに作られる
  部落の近くに来て、夜中にあたりのものが震えあがるほど物凄い
  大きな声を出すので、この声を聞くと古老達は
 「コタンコル・カムイ(部落を支配する神)が魔物をどなりつけている」
  とつぶやいた。

  この夜行性の鳥は寝もやらずに部落に忍びよる魔性を、人間の傍らに
  近寄らせないように守っていてくれる。
  そればかりか朝になってみると、声のしたあたりにはみごとな鮭の
  咽喉のところを少しばかり食べて、あとはお前達にやるぞといわんば
  かりに川原に置いてある。

  重要な食糧を夜を徹して獲ってくれる存在は神の仕業に違いないと考
  えられていた。(実際は自分の領分の宣言をしているのであり、一番
  おいしいところだけを食べて脂肪の少ないまずいところをのこして
  いる)

実際はそうなのだろうが、昔のアイヌの人たちの自然に感謝して必要な物を必
要な分だけを戴くこの考え方は、今の私達が忘れてしまった心だ。
利益や権力を限りなく追い求めて苦しんでいる今の時代は不幸だと思う。

  身にちかくふくらうがまよなかの声  山頭火

  よっぴてないてふくらうの月  山頭火 *

  かたむいた月のふくろふとして  山頭火

  冴えかへる月のふくらうとわたくし  山頭火

  昼はみそさざい夜はふくらうの月が出た  山頭火

  「とかく女といふものは」ふくらうがなきます  山頭火 *

  *印の2枚の色紙に書いたものをホームページのトップページに
   載せました。

梟雑話を読んで頂きまして有難うございます。
週刊ということでしたが気が乗らないとなかなか書も文もかけないものですか
ら、不定期ということにさせていただきたいと思います。
よろしくおねがいします。

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    著者 佐藤北耀

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