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      MAIL MAGAZINE  梟雑話
       2004/03/27  [072]

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 ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
                 山頭火の句
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キクイタダキ(菊戴)

1ヶ月近くにわたって続いたダリアの根分け作業が明日終わるかもしれない目
途がついて、残りの数株を一人残って片付け終わって掃除をしていた。
何かが作業場のガラスにダンとぶつかったので外を見ると、小さな鳥がふらー
っと雪の上に降りた。

もどかしく鍵を開けて側に行くが、脳しんとうのようでじっとして動かない。
厚手のゴム手袋を穿いてそっと両手で包むように取り上げた。
手のなかの鳥は、鶯色がかったねずみ色の体、細い嘴、そして小さな頭には山
吹色の縦長の模様、こんなに小さい鳥は今までみたことがない。

なんとなくシジュウカラに似ているので雛かと思ったが、シジュウカラには頭
に黄色い部分はないなと思いながら、観察すべく入れ物をうろうろ探したが、
穴の大きい収穫の篭では逃げてしまいそう、物置でやや不透明になってしまっ
たプラスティックの飼育箱をみつけて、中にティッシュを敷いてそっといれた。

小さい、小さい、本当に小さい。
むかし小鳥の置物でモールのような肌触りで、細い脚のついた小鳥があったが、
そんな感じだ。
鳥の図鑑を持ち出して見たところありました。

キクイタダキ・・・スズメ目ウグイス科。体長10cm。本州中部以北では留
鳥。平地から山の森林にすみ、小さな体と細い嘴をいかして、針葉樹の葉の隙
間の昆虫やクモを取って食べる。停空飛翔で葉先の昆虫を捕らえることもある。
日本で一番小さな鳥のひとつ。苔などをクモの糸でからめ、椀形の巣を枝から
下げるように作る。地鳴きはツィー、さえずりはツチツチ、チュチュチュ−チ。
水浴びなどの場合以外、地上には降りない。・・・

正気に戻ってきながらキクイタダキは箱の中でバタバタし始めた。
少し蓋をずらしてカメラに収めようとしたが、動くのではっきりとしたいい写
真は撮れなかったが、ピン惚けのものは数枚撮れた。
暴れだしたので羽が傷ついてはいけないと思い離してやった。
ツイ−と一直線に飛んでいった。

見えるか見えないダリアの芽を探して、一球一球分けていく根気の要る埃まみ
れの作業で疲れた心にこの上もない幸せをくれたキクイタダキくん。
皆と一緒に作業を終えていたら多分一生見ることが出来なかっただろう偶然に
感謝。

それにしても可愛かったなー。

  音は朝から木の実を食べに来た鳥か  山頭火

  いただきの木のてつぺんで鳥はうたふ  山頭火

  春の鳥とんできてとんでいつた  山頭火

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長いことご無沙汰しました。忙しさも一段落し久し振りに書く気になりました。
雪もずいぶん解けましたが土の中はまだ硬く凍っているようです。
春の畑作業はまだ先、ぼちぼち梟雑話も書きたいと思っています。

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    著者 佐藤北耀

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