思えば中学の終わりから、高校に入った辺りの頃。何時だ・・・という事ははっきりと覚えていませんが、俺が文を書き出した頃は確かその辺り。
当時良く読んでいた椎名誠の本。難しい文体の本や物語りは読んだ事がありましたが、この人のエッセイを読んで優しく砕けた文体に触れ、こういう風に自分の言いたい事を自分の言葉で書き綴る事なら俺にだって出来るかもしれない。そう思い、ノートに今の気持ちを書いてみたのが始まりでした。
将来エッセイストになろう!物書きになって生きてゆこう!と言う気持ちは全くありませんでした。ただ、不安定な心の内に悶々とたまり込んでいた自分の気持ちを外に書き出してみたかっただけでした。だから、漫画絵を描いていた事もありました。
最初のうちはろくに人に読ませる様な文は書けませんでした。それこそ自分ですら書いている文によって一体何を伝えたいのだかがはっきりとわからない。形として心の内を文に書き出す事によって、俺は、この自身ですら自分が誰に何を言いたいのか、何をしたいのか、どういう風な人間になりどういう風に生きてゆきたいのかをはっきりと描く事が出来ていないという事に気付く事となりました。それからです。悶々とあれこれ物事を考える事がただの苦痛ではなく、形となる文と対にする事によって苦しいながらも楽しくワクワクとする事と変わっていったのは。
考えて、考えて、書く事をぼちぼちと続けて、少しづつ自分が何を考えているのかが次第に自分で理解出来る様にもなってゆきました。表現文法はヘタクソながらも、自分が言いたい事を何とか書き出せて思わず読み返して「よしっ!」と自分で自分が嬉しくなれる文を書ける様になり、ますます俺の中での随筆に対する比重が大きなものとなってゆきました。
ある程度書ける様になると、それを人に読んでもらいたいという気持ちが強くなってゆきます。自分の中で、自分という像がはっきりと描かれる様になると、それを人に見てもらいたい。それに対する人の言葉を聞いてみたい。最初は親に読んでもらったり、学校の先生に読んでもらったり、友人に読んでもらったり。そこからが、俺の表現の始まりでした。
まだ日本でインターネットという言葉がちらほらとしか聞こえて来なかった頃、初めての会社勤めを始めた俺は借金をしてパソコンを一式買い込みました。そこで初めて不特定多数に向けてのホームページ開設。しかし、そんな一個人が開設したホームページなど読んでくれる人はほとんどおらず、チャットに入り込んでみても大人数の話の輪の中には入り込めず、筆無精はなかなか知らない人とのメール交換も続かず、何だかそのホームページがただの個人的な随筆置き場の様に感じられてしまって続ける事は出来ませんでした。
とあるきっかけから、メールマガジンというものを知ります。何時来ているか、誰が来てくれているのかさっぱりわからず、ただの自己満足に終わる様なホームページとは違うかもしれない。登録してくれた人のメールボックスに直接届くメールマガジンはもしかして俺の文書きに発破を掛けてくれるかもしれない。ワクワクと同時に直接知りもしない人にメールが届くという事にドキドキしながらも登録しました。
表題の「風に吹かれてかげろう」というのは、山頭火の詩「風に吹かれてたんぽぽ」からとったものです。123・124号で配信した「かげろう」という文を書いてから、かげろうはずっと俺の中に大きく存在するものでした。だから何処かにかげろうと関連づけた名を付けたいと考えたのです。
配信期間は少なくとも週に一つは配信するという事にしました。だから週刊以上となっています。実際週に二つ以上配信した事は希なのですが。「不定期」にはしたくありませんでした。そうすれば無精な俺は必ず何処かで何時の間にかやめてしまう。きちんと週刊と宣言し、少なくとも三年は続けてみよう。三年経ったら俺の中で何かが変わっているかもしれない。そうして、今は書き続けています。
最初は三年と言えば先の長い事でしたが、今となれば俺の中では「かげろう」は三年で終わらす訳にはゆかないものになりました。継続は何とかと言いますが、ここまで続けてくると確かに文に対しての俺の中での存在が随分変わってきました。まだ、ネタが尽きた感を抱けない以上、続けるしかありません。これからどう俺が変わってゆくのか俺は非常に楽しみでなりません。こんな統一されたテーマも何も無い随筆マガジンでネタが尽きる訳が無い。生きて、考えて、ネタが生まれる「かげろう」が終わると言う事は、死ぬか、生きる気力を失った時くらいでしょう。長くても三時間位あれば執筆から配信まで済ませる事の出来るこの作業、いろいろ忙しくて・・・と言う言い訳も成り立ちません。
現在「風に吹かれてかげろう」は、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」と、ニフティのメールマガジン立ち読みスタンド「Macky!」から配信されています。
これから俺はどうなるのか、何を見て、何を考えて、何を書いてゆくのか。先のわからない人生にワクワクする俺に、宜しければどうか末永くお付き合い下さい。
2001年11月28日
佐藤幽泉
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